folklore

Anansisem(クモの物語)Obretema, Eastern Region, Ghana, 1999

ガーナのアカン民族の人たちの間で親しまれている、クモのアナンシが主人公の物語。調査村のオブリティマにて採録。

貧乏になった狩人の話

昔むかし、13人の小人がいた。あるとき彼らは、椰子酒をつくろうと、椰子の木を切り倒しにいった。できた酒は、誰も味見を許されていなかった。そこにクウェク・アナンシKweku Ananse(クモのクウェク)がやって来て、ちょいと味見をした。それを見つけた小人がいった、「アナンシ、借りはぜんぶ返せよ!」

そこで、クウェク・アナンシは借りを全部引き受けた。そんなわけで、クウェク・アナンシは畑へいってココヤム(mankani)を植えつけ、それで借りを返そうとした。ココヤムが大きくなって収穫の時期になると、アナンシはいった、「よし、これで借りが返せるぞ」そこにココフェディエKokohwedie(シギの一種)がやって来て、ココヤムをぜんぶ食べてしまった。そこでクウェク・アナンシはいった、「おい、ココフェディエ、おれのココヤムを食べちまったからには、借りを引き受けろよ!」そこで、その鳥も借りを引き受けた。ココフェディエはどこかに卵を置いていて、それで借りを返そうとした。そこにオニャOnyna(綿の木)が倒れてきて、卵は木っ端みじんに壊れてしまった。そこでココフェディエが綿の木にいった、「借りを返して下さいよ!」そこで木も借りを引き受けた。綿の木は、ちょうど葉っぱに綿をいっぱい実らせていたので、それで借りを返そうと思った。綿の実は大きくなって割れると、地面に舞い落ち始めた。そこに狩人が通りかかると、落ちている綿を拾い集めた。そこで綿の木は狩人にいった、「借りを引き受けて下さいよ!」そこで、狩人は森の中を歩きに歩いたけれど、誰ひとり、代わりに借りを引き受けてくれる者はなかった。そんなわけで、狩人は貧乏になってしまったんだとさ。

せむしになった蜘蛛の話

耳をよーく開けて、聴くんじゃよ。…昔むかし、小人たちは大きな大きな山の上に住んでおった。小人たちはまだそこに、なにも作物を植え付けていなかった。そこにクウェク・アナンシがやって来て独りごとをいった、「よし、おれがひとつ植えてやろう」そして彼が山刀を取り出したとたん、小人の長老がどなった、「誰だ?」アナンシは答えて、「私です、クモです。今から植付けをしようとしているんです」それを聞いて、小人の長老シアラShiaraは小人たちにこう命じた、「行け、子どもたちよ!あのクモのために植付けをしてやれ」彼がそう言い終わらないうちに、小人たちはすっかり植付けを済ませてしまった。それはけっして小さい山ではなかったんじゃが。

さて、アナンシはいったん家に帰ったが、今度は木を切り倒すためにまた畑に戻ってきた。そこで長老シアラはまたどなった、「誰だ?」アナンシは答えて、「私です、クモです」「ここで何をしておる」「お子さん方が植付けをしてくれたこの畑ですが、ちょいと木を伐りたいのです」そこでシアラはいった、「子どもたちよ、行ってあのクモのために木を伐ってやれ!」シアラがそういったとたんに、もう小人たちは木々をみんな切り倒してしまった。その後アナンシは三たび舞い戻ってくると、マッチに火をつけようとした。そこでシアラはどなった、「誰だ?」「私です、クモです。畑を燃やそうと思ってきました」そこでシアラはこう命じた、「子どもたちよ、行ってあのクモのために畑を燃してやれ」それで小人たちは畑を燃やした。アナンシは四たび戻ってくると、トウモロコシを植え付けるために山刀を地面におったてようとした。そこでシアラが叫んだ、「誰だ?」「私です、クモです。トウモロコシを植えようと思って…」シアラはいった、「子どもたちよ、行ってあのクモのために植え付けてやれ!」そこで小人たちはトウモロコシを植え付けた。

トウモロコシが育った頃、アソAso(耳)という名のアナンシの妻が、息子のンタクマNtakumaを背中におぶって畑にやって来た。トウモロコシは、まだとても小さなものだったが、子どもがそれを見て母親にいった、「ママ、トウモロコシが食べたい。ママ、トウモロコシが食べたいよう」トウモロコシはまだ大きくなっていなかったが、アソはいった、「この子のために一つだけむしってあげよう」そしてアソがたった一本のトウモロコシをもいだとたん、シアラがどなった、「誰だ?」アソはいった、「私です、アソです」「ここで何をしておる」「息子のために、トウモロコシをむしっているのです」そこでシアラは小人たちにこう命じた、「子どもたちよ、行ってあの女のためにトウモロコシをぜんぶむしってやれ!」そこで小人たちはトウモロコシをぜんぶむしってしまった。

アソは大急ぎでアナンシのところへ知らせに走った。アナンシはやって来て、畑のありさまを見ると、両手で胸をたたいて嘆きかなしんだ。それを見て小人の長老はいった、「誰だ?」「私です、クモです」「いったいどうして胸をたたいているのだ?」「だって、トウモロコシが…」そこで長老はいった、「子どもたちよ、行ってあのクモのために胸をたたいておやり!」そこで、小人たちは寄ってたかってアナンシの胸を殴った。そんなわけで、アナンシはせむしになってしまったんだとさ。

おできから生まれた三兄弟の話

昔むかし、一人の女がいた。女には子どもができなかった。あるとき、女の脚におできができて、一年たっても二年たっても治らなかった。とうとうおできが破れたとき、中から子どもが飛びだしてきた。一人出てくるとまたひとり、ひとり出てくるとまたひとり。子どもたちは、名をそれぞれ「大きいアタ」Ata opanin(双子の兄)、「小さいアタ」Ata kakra(双子の弟)、それに「ちびのニャンサ」Kakura Nyansa(知恵者)といった。ちびのニャンサはおできから出てきたとき、右手と左手にひとつずつ牛の尾(bodua)を握っていた。

女はいった。「子どもができたからには、食べ物を探してきて食べなくちゃ」

そこで彼女は食事をつくったが、子どもたちの分を用意しなかった。女とその夫が食べているときに子どもたちが外から帰ってきた。すると女は彼らにいいつけた。「水を汲んでおいで」そこで子どものひとりが母親に尋ねていった、「母さん、どうして僕たちにご飯をくれないの」女は答えて、「私はおまえたちの分なんて用意してないよ。さっさと水を汲んでおいで」女の言葉に、ちびのニャンサは腹を立てた。そこで、ニャンサは右手に持っていた牛の尾で食べ物のある方を指した。すると、お皿に残っていたスープと魚もろとも、みんな消えてしまった。その後もこうしたひどい扱いが長い間つづいたが、ある日のこと、女は三兄弟に水汲みをいいつけた。ところが実は、兄弟がそこを通ると大木が倒れて彼らを下敷きにしてしまうように、女は道に罠を仕掛けておいたのだった。三人がその場所にやって来たとき、マンプルシMamprusi(「小さいアタ」のあだ名)がいった。「ちょっと待って、ここで止まろう」そこで、牛の尾がちびのニャンサに教えていった。「そこに立っている木には、おまえたちの母さんが罠を仕掛けているよ」見ると、その木の下には食べ物が置いてあった。そこで、ちびのニャンサが右手にもっていた牛の尾を投げてから道をわたり、三人が無事に水を汲んで道を渡り終えた瞬間、大木が倒れてきた。

三人は家に戻ってくると、母親があまりに彼らのことを憎んでいるので、この町を出て叔父さんのいる町へ行くことに決めた。ところが女は、通り道の岩山にも罠を仕掛けておいた。三兄弟はずんずん歩いていき、岩山にさしかかると、牛の尾がちびのニャンサに教えていった。「みんな、ここで止まるんだ」そこで、ちびのニャンサが右手に持っていた牛の尾を投げると、それはぐるっと回って戻ってきた。次に左手に持っていた牛の尾を投げると、それも戻ってきた。牛の尾が戻ってくる前に三兄弟は無事に道を渡ったが、そのとたんに山が閉じて、ばらばらに砕けてしまった(apae pae nkiti kiti kiti…)。

三人が叔父さんの町につくと、叔父さんは彼らにこういった。「この町では一日に三度食事をしてはならないんだよ。朝と晩にしか食べてはいけないんだ」ちびのニャンサはいった。「僕は自分が好きなときに食べるよ」そして彼はあれを作っては食べ、これを作ってはまた食べ、叔父さんの注意をまったく聞こうとしなかった。

そんなある夜のこと、眠っている三人の耳に、大きな足音が響いてきた――ズシン、ズシン、ズシン(kan san kran,kan san kran,kan san kran)――この町の神obosomがやってきたのだ。大きいアタとマンプルシの兄弟は、いそいでベッドの下に隠れた。だが、ちびのニャンサはいった。「僕はこんな神なんて怖くないぞ。僕こそが飯を食べた者だ」それを聞くと、神は部屋の入り口に立ち止まってこういった。「ここでは三度食事をしてはならんのだ。もしおまえたちが三度食事をしたのなら、おまえたちをつかまえて食ってやるぞ」するとちびのニャンサは神の口真似をしてこういった。「アハ、アピティペテピティペテ(aha apitipetepitipete)…」神がもう一度繰り返すと、ちびのニャンサもふざけて、「アピティペテピティペテ…」と繰り返した。すると神は山刀を振りかざし、ちびのニャンサめがけて切りつけてきた。ちびのニャンサもすかさず山刀を取りだし、神に向かって切りつけた。ところが切りつけても切りつけても、切った部分が後から後から元に戻ってしまうのだった。そこでちびのニャンサはいった、「マンプルシ、オクラをつぶしてきておくれ」マンプルシがオクラを持って戻ってくると、神がちびのニャンサに切りつけ、ニャンサもまた神に切りかかっているところだった。「マンプルシ、僕が切りつけるところにオクラを撒いておくれ!」ちびのニャンサはそう叫んだが、一度目は失敗した。ニャンサが二度目に切りつけたとき、マンプルシはうまくオクラをばら撒いたので、神はどう(tim)!と倒れてゴロゴロゴロ(kukro kukro kukro)…と転がっていき、クウェク・アナンシの家の戸口でドン(santan)!と止まった。

そのとき、アフル・ドシェドシェAfuru dohwe dohwe(大きな大きなお腹)という名のアナンシの長男は、ちょうどおしっこにいこうとしていた所に、なんだか大きなものが転がってきたのを見て、おしっこもせずに逃げ帰ってくるとこういった。「父ちゃん、父ちゃん、見においでよ。外になんだか大きなものがあるよ」そこでクウェク・アナンシはやって来て、神を見るとこう思った。「しめしめ、王様は、この神を殺したものには賞金をやるといっておられたぞ」そこでアナンシはいった。「わしを運べ」クウェク・アナンシは宮殿までえっちらおっちら(nkitikiti)運ばれていくと、そこでドサッ(dwansan)と下ろされた。王様は彼の話を聞くと、賞金を与える約束をし、クウェク・アナンシを王様の乗る山車に乗せた。

しばらくして、ちびのニャンサとマンプルシが町を散歩していると、クウェク・アナンシが派手な山車に乗り、人々が彼をうちわで扇いでいるところに行き会った。兄弟はおどろいていった、「エイ!クウェク・アナンシはいったいどんなことをしたので、山車になんて乗っているのかね?」そこで人々が兄弟に教えてこういった。「王様は、町の人々をたくさん殺していた神をやっつけることができた者には褒美を出すとおっしゃっていて、クウェク・アナンシがそれをしたのだよ」「何だって?」兄弟はいった、「ちょっと待った」そして彼らはクウェク・アナンシにむかってこういった。「もしもあんたが本当に神を殺したのなら、その首をもってきてみせてくれよ」そこでクウェク・アナンシは大変困ってしまった。いったいどこへ行けば首を持ってこられるのか?クウェク・アナンシは家に戻ると、子どもの一人の首をちょん切って持ってきた。しかしそれは胴体に合わなかった。アナンシはもうひとりの子どもの首をもってやって来た、しかしそれも合わなかった。ふたたびアナンシは家に戻ると、妻の首をちょん切って持ってきた。しかしそれも合わなかった。そうこうするうちに、ちびのカクラは小さいアタにいいつけて、神の首を持ってこさせた。小さいアタが神の首を持ってきて胴体にすえつけると、それはぴったりとはまった。そこで人びとはクウェク・アナンシをつかまえると、彼をぶってぶって、ぶちのめした。

そんなわけで、クウェク・アナンシはいつも部屋の隅っこに隠れているんだとさ。

ネコの大家とネズミの借家人の話

昔むかし、ある村にネコの紳士(agyamoa:agya紳士+moa動物)が住んでいた。ネコ氏はあるとき、とっても素敵な(kamakama)2階建ての家を建てるとこういった、「誰にでも、部屋をただで貸してあげよう。ただし、家の中でなにか物がなくなっても、それを口外してはならないよ」欲張りネズミはそれを聞くと、妻と子どもたち、孫たち一同を引きつれてネコ氏の家に引っ越してきた。しばらくたって、ネズミの孫たちは外へ遊びに行き、そのまま戻ってこなかった。次にはネズミの子どもたちが外へ遊びに出たまま、やっぱり戻ってこなかった。最後にネズミの奥さんも、外に出かけて二度と戻ってこなかった。ところでこの家のきまりは、もしも何か物がなくなってもそれを大家に訴えてはならない、いうことだ。そこでネズミは家の外に出て、椰子酒を売っている店の軒先にすわると、頭を抱えて(ode ne nsa asumu nano耳の穴に手を当てて)考えこんだ。「こいつは困った、こいつは困ったことだ、おお!」そこに1頭の羊が通りかかって、ネズミに尋ねた。「どうしたんだい?」ネズミは答えて、「どうしたことか、僕の妻と子どもたちはみんな家から消えてしまった。それなのに、今住んでいる家ではなくなった物のことを口にしてはならないというんだ」そこで羊がいうには、「いますぐ荷物をまとめてその家から出てお行き。そうしないとお前さん自身が消えてなくなってしまうよ」そこでネズミは家を出る決心をし、荷物をまとめに家に戻った。するとネコ氏がやって来て、ふたりは鉢合わせしてしまった(ohwe n’anim顔を見合わせた)。「どうして荷物をまとめてるんだい?」ネコ氏は尋ねた。「家を出ることにしたんです」ネズミは答えた。ネコ氏がいうには、「お前さん、私に借りを返さなければ出ていくわけには行かないよ。私はこの家を建てるために砂とセメントをたくさん使ったんだから」ところがネズミは逃げ出した、そこでネコ氏は追いかけた。そんなわけで、ネズミの借金を取りたてるために、ネコはネズミを追いかけるようになったんだとさ。